うれしさと悔しさを原動力に
松田わたしも同じTMCに参加して優秀賞をいただくことができました。山田さんには到底かないませんが、ようやく修理のプロとしてやっていく自信がつきました。それとは別の話ですが、仕事で忘れられない思い出があります。長くお使いいただいたことで劣化したガス機器を交換する際にお客さまから「あなたにすべて任せる、あなたがいいと思うものにして」と仰っていただけたことです。結果的にガスコンロからレンジフード、給湯器、浴室暖房乾燥機まですべて最上位機種をご購入いただきました。実はそのお客さまのご自宅には何度か修理でうかがっており、故障をしても安易に交換を勧めず修理を続けてきた経緯があります。お客さまの気持ちを尊重し、諦めずに修理を続けたことで大きな信頼を得ることができた。自分のお客さまと向き合う姿勢は間違いではなかった。そう実感できてすごくうれしかったのを覚えています。
田中些細なことかもしれませんが、後輩が解決できなかった修理をわたしが手伝いに行って、直すことができたのはうれしかったですね。頼られて、それに応えられたことが自信につながりました。それから、お客さまに「いつも田中さんが来てくれて助かるわ」と言われたときも、自分が“かかりつけ医”のような存在になったような気がしてうれしかったのを覚えています。
細谷修理の現場ではうれしい言葉を数多くいただきますが、印象に残っているのは、むしろお叱りの言葉ですね。以前わたしの確認不足で機器の発注ミスをしたことがあり、「信用して頼んだのに残念だ」とお叱りを受けたことがあります。それまでも仕事上の小さなミスはあったのですが、ほとんどのお客さまは「仕方ないね」と許してくださいました。でも、本当は怒りたくても口に出さなかっただけかもしれない。そう気付いてハッとしたのを覚えています。それ以来、確認作業そのものを見直し、常にお客さまの立場でものを考えるようになりました。あの経験が、プロとして自覚や向上心の原動力になっている気がします。お叱りを受けたことは決して自慢できませんが、はっきりと注意してくださる方は少ないですから、あのお客さまには今でも感謝しています。